Zene

病的バリアント検査とPRSの違い|BRCAとPRSを同じに考えてはいけない理由

基礎知識

「遺伝子検査」という一語には、性質のまったく異なる検査が含まれています。とりわけ、影響の大きい病的バリアントを調べる遺伝学的検査と、多因子疾患を対象に多数のSNPを統合するPRSを混同すると、加入者に不必要な不安を与えかねません。この2つの違いを整理します。

ゲノ先生ミライさんの対話

ゲノ先生のイラスト

先生役

ゲノ先生

遺伝や検査の仕組みを、根拠ベースでやさしく解説する案内役。

ミライさんのイラスト

質問役

ミライさん

読者の疑問や不安を代弁しながら、理解を深めていく相談役。

ミライさん
ゲノ先生、遺伝子検査の説明でよく「BRCA遺伝子」の話が出てきますよね。あれとPRSは、同じ遺伝子検査なんですか?
ゲノ先生
いい着眼点だね。同じ「遺伝子検査」という言葉でくくられているけれど、中身はかなり違うんだ。正式な分類があるわけではないんだけど、健保さんが実務で見分けるなら、3つに分けて考えるとすっきりすると思う。
ミライさん
3つ、ですか。
ゲノ先生
1つめが、高浸透率あるいは中浸透率の病的バリアントを調べる検査。BRCA1/2はここに入る。2つめが、少数のSNPだけを見て体質を推定する、いわゆる簡易的な体質検査。3つめが、多因子疾患を対象に多数のSNPを統合するPRSだよ。あくまで実務上の目安であって、学術的な分類名ではないからね。
ミライさん
同じくくりにされがちですけど、別物なんですね。何がいちばん違うんですか?
ゲノ先生
効果の大きさと、意味の重さだね。BRCA1/2のような高浸透率の病的バリアントは、1つ持っているだけで発症リスクが大きく変わることがある。だから医療の現場では、遺伝カウンセリングを行ったうえで検査し、結果によっては具体的な医学的管理につながっていく。
ミライさん
「浸透率」というのは?
ゲノ先生
そのバリアントを持っている人のうち、実際に発症する人の割合のことだよ。浸透率が高いバリアントほど、持っていることの意味が重くなる。ただし高浸透率でも100%ではないし、年齢とともに変わることも多いんだ。
ミライさん
PRSはどうなんですか?
ゲノ先生
PRSは正反対の性質でね。1つ1つのSNPの影響はごく小さくて、誰もが何かしら持っている。それを数千、数万と足し合わせて、集団の中での相対的な位置を出す。だから「特別なものを持っているかどうか」ではなく、「全体の中でどのあたりか」という情報なんだ。
ミライさん
希少なものを探すのと、全員に位置をつけるのとの違い……。
ゲノ先生
うまい言い方だね。もうひとつ、実務上とても大事な違いがある。血縁者への意味だよ。
ミライさん
血縁者、ですか。
ゲノ先生
高浸透率の病的バリアントが見つかった場合、その情報は本人だけでなく、親やきょうだい、子どもにも直接関わってくる。だから医療機関では、遺伝カウンセリングの体制を整えたうえで扱うんだ。一般的な体質検査やPRSと同じ気軽さで扱ってはいけない領域なんだよ。
ミライさん
健保の事業として遺伝子検査を入れるとき、この違いは押さえておかないと危ないですね。
ゲノ先生
とても重要な気づきだよ。もし事業者の説明で、BRCAのような話とPRSの話が地続きに語られていたら、そこは必ず確認してほしい。「この検査は、単一遺伝子の病的バリアントを判定するものですか」と聞けばいい。
ミライさん
加入者への説明でも、その2つは分けて書いたほうがよさそうです。
ゲノ先生
そうしてほしいな。「遺伝子検査」という一語でまとめてしまうと、PRSの結果を受け取った人が、必要以上に強い意味を感じてしまうことがある。言葉を分けることが、そのまま不安を減らすことにつながるんだ。

まとめ

  • 1実務上は「高浸透率・中浸透率の病的バリアント検査」「少数SNPの体質検査」「多因子疾患のPRS」に分けて理解する
  • 2高浸透率の病的バリアントは1つで大きくリスクが変わり、血縁者にも直接関わるため専門的な体制が必要
  • 3PRSは小さな影響の集積で相対的な位置を示すもので、同じ枠で語ると誤解を招く

理解度チェック

BRCA1/2の病的バリアント検査とPRSの違いとして正しいものは?

Aどちらも同じ種類の検査で、調べるSNPの数だけが違う
B前者は影響の大きい変異の有無を調べ、後者は多数の小さな影響を統合して相対的な位置を示す
BRCA1/2のような高浸透率の病的バリアント検査は、1つの変異の有無が大きな意味を持ちます。PRSは影響の小さな多数のバリアントを統合し、集団内での相対的な位置を示すもので、性質が異なります。
CPRSのほうが影響の大きい変異を扱う

よくある質問

PRSでBRCA遺伝子の変異はわかりますか?
一般に、多数のSNPを統合するPRSと、BRCA1/2などの病的バリアントを判定する遺伝学的検査は目的も手法も異なります。病的バリアントの有無を判断したい場合は、医療機関で遺伝カウンセリングを受けたうえで、目的に合った検査を受ける必要があります。
浸透率とは何ですか?
特定の遺伝的バリアントを持つ人のうち、実際にその疾患を発症する人の割合を指します。浸透率が高いバリアントほど発症との結びつきが強くなりますが、100%とは限らず、年齢によって変化することもあります。

参考情報

関連記事

遺伝子検査サービス Zene360

高精度ゲノム解析で体質リスクを可視化。法人向け遺伝子検査サービスの詳細はこちらからご確認ください。

Zene360 サービス詳細へ