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心血管疾患とPRS|既存のリスクスコアに何を足せるのか

疾患リスク

心血管疾患は、健診データだけでもかなりの予測ができる領域です。だからこそ「PRSを足す意味は何か」という問いに、はっきり答えられる必要があります。追加価値がどこにあるのかを整理します。

ゲノ先生ミライさんの対話

ゲノ先生のイラスト

先生役

ゲノ先生

遺伝や検査の仕組みを、根拠ベースでやさしく解説する案内役。

ミライさんのイラスト

質問役

ミライさん

読者の疑問や不安を代弁しながら、理解を深めていく相談役。

ミライさん
ゲノ先生、心筋梗塞や脳卒中のリスクは、健診の数値でもかなりわかりますよね。そこに遺伝子検査を足す意味はあるんでしょうか。
ゲノ先生
とても鋭い質問だね。実際、心血管疾患は年齢、性別、血圧、脂質、喫煙、糖尿病といった既存の因子だけでも予測性能が高い。だから、PRSを加えたときのAUCの伸びは、そう大きくないことが多いんだ。
ミライさん
では、意味は薄いということですか。
ゲノ先生
いや、そう単純でもないんだ。ここがポイント!2つの観点で価値が出る可能性がある。1つめは、上位層の抽出。全体の順位づけの改善は小さくても、PRSの分布の上位数%にリスクが集中していれば、既存の基準では拾えなかった方を把握できる。
ミライさん
2つめは何でしょう。
ゲノ先生
時間だね。血圧も脂質も、多くの場合は年齢とともに上がってくる。つまり、既存のリスク因子で高リスクと判定されるころには、すでに何十年か経過しているわけだ。
ミライさん
あっ、PRSは若いうちからわかるんですね。
ゲノ先生
そこが大きな違いになり得るところなんだ。遺伝的な素因は生まれたときから変わらないから、健診値がまだきれいな20代、30代の時点でも同じ情報が手に入る。これは既存のリスク因子にはない強みだね。ただし一点だけ注意してほしい。絶対リスクも、リスクを見る時間の幅も、年齢層ごとの較正も、既存の因子への上乗せ分も、年齢によって変わる。だから「その年齢層でも検証されているモデルか」は確認したうえで使う、というのが正確な言い方になるよ。
ミライさん
若い加入者への働きかけは、健保としてもずっと課題でした。
ゲノ先生
多くの健保さんがそうだよね。若い方は健診の数値に異常が出ないから、保健指導の対象にもならない。声をかける口実がない、という状態が続く。ここはPRSが活きる余地の大きいところだと思う。その年齢層でも検証されたモデルかを確認したうえで、ぜひ検討してほしい。
ミライさん
ただ、若い方に「あなたはリスクが高い」と伝えるのは、少し怖い気もします。
ゲノ先生
その感覚は大切にしてほしい。だから伝え方が肝心なんだ。「あなたは危ない」ではなく、「あなたにとっては、早めに整えておく価値が大きい」という枠組みにする。心血管疾患は、生活習慣で相当に変えられる領域だからね。
ミライさん
実際に、遺伝的リスクが高くても生活習慣で変わるんですか。
ゲノ先生
遺伝的な素因が高めの方でも、禁煙、適正体重、身体活動、食生活といった要因が良好であれば、発症のリスクが下がることを示した研究は複数ある。つまり、遺伝は出発点を決めるけれど、そこからの道筋は変えられるということだね。
ミライさん
それは前向きなメッセージになりますね。
ゲノ先生
ただし、ここでも既存の推奨を超えないこと。血圧や脂質の管理目標は、PRSではなく既存のガイドラインで決まっている。PRSは、そのガイドラインに従うことを後押しする補助情報として使う。そして、後押しになっているかどうかは測ってほしい。リスクを通知するだけでは効果がはっきりしないという報告がある一方で、フォローと組み合わせた介入をランダム化比較試験で検証した報告も出てきている。事業者がそうした検証を持っているかを確認したうえで、自組織でも効果を測りながら進める設計にしてほしいんだ。

まとめ

  • 1心血管疾患は既存のリスク因子だけでも予測性能が高く、PRSのAUC上乗せは小さいことが多い
  • 2健診値に異常が出る前の若年期から同じ情報が得られる点が強み。ただしその年齢層で検証されたモデルかは確認する
  • 3PRSは既存ガイドラインの管理目標を変えるものではなく、実践を後押しする補助情報として使い、効果を測る

理解度チェック

心血管疾患におけるPRSの追加価値として説明が適切なものはどれですか?

A既存のリスクスコアより高い予測性能を単独で持つ
B健診値に異常が出る前の若年期から同じ情報が得られる(その年齢層でも検証されたモデルかは要確認)
遺伝的素因は生涯変わらないため、健診値がまだ正常な若年期から同じ情報が得られます。これは既存のリスク因子にはない強みです。ただし絶対リスクや時間幅、年齢層別の較正は年齢によって変わるため、その年齢層でも検証されたモデルかを確認して使います。また管理目標は既存のガイドラインで定められており、PRSによって変更されるものではありません。
CPRSに応じて血圧や脂質の管理目標を個別に設定できる

よくある質問

健診で血圧や脂質を測っていれば、PRSは不要ですか?
不要とは限りません。健診値は異常が現れるまでに時間がかかりますが、遺伝的素因は若年期から同じ情報として得られます。これは既存のリスク因子にはない強みです。ただしその年齢層でも検証されたモデルかを確認する必要があり、既存の指標を置き換えるものではなく、補う情報として位置づけられます。
遺伝的リスクが高いと、生活習慣を改善しても意味がないのですか?
そのようなことはありません。遺伝的素因が高めの方でも、禁煙・適正体重・身体活動・食生活などが良好であれば発症リスクが低下することを示す研究が複数報告されています。

参考情報

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