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遺伝子検査の精度ってどのくらい?

基礎知識

「この遺伝子検査の精度は何%ですか」。よく出てくる質問ですが、実は一つの数字では答えられません。「精度」という日本語の中に、DNAを正しく読み取れているかという話と、病気をどれだけ予測できるかという話が混在しているためです。この2つを分けて整理します。

ゲノ先生ミライさんの対話

ゲノ先生のイラスト

先生役

ゲノ先生

遺伝や検査の仕組みを、根拠ベースでやさしく解説する案内役。

ミライさんのイラスト

質問役

ミライさん

読者の疑問や不安を代弁しながら、理解を深めていく相談役。

ミライさん
ゲノ先生、遺伝子検査を組合に提案するとき「精度はどうなの?」って絶対聞かれると思うんです。どう答えればいいですか?
ゲノ先生
いい質問だね!まず「精度」には2つの意味があることを知っておこう。1つ目は「SNPの読み取り精度」、2つ目は「リスク予測の精度」なんだ。
ミライさん
2つあるんですか?何が違うんですか?
ゲノ先生
SNPの読み取り精度は、専門的には分析的妥当性と呼ばれる、検査工程そのものの性能だね。これはマイクロアレイかシークエンスか、imputationを使っているか、対象が低頻度の変異か、検体の品質はどうか、といった条件で変わるから、検査法ごとに確認すべきものなんだ。そして、たとえ読み取りの一致率が高くても、それは「その人が将来この病気になるかを高い確率で当てられる」という意味ではまったくない。2つ目は、読み取ったSNPから病気のリスクをどれだけ区別できるかという、別の話なんだ。
ミライさん
つまり、読み取りはバッチリでも、予測が難しいってことですか?
ゲノ先生
そうなんだ。病気は遺伝子だけで決まるわけじゃなくて、生活習慣や環境の影響も大きいからね。天気予報で「降水確率80%」って言われても、降らないこともあるよね。それと似たような話さ。
ミライさん
じゃあ、予測の精度を上げるにはどうするんですか?
ゲノ先生
ここがポイント!そこでPRS(ポリジェニックリスクスコア)が使われる。少数のSNPだけを見るのではなく、多数のSNPを重みづけして合算し、集団の中での相対的な位置を出す。ただし「PRSを使っているから高精度」と言い切れるわけではなくて、元になったGWAS、対象集団、構築方法、外部検証まで見る必要があるんだ。ついでに言うと、「何項目わかるか」も精度とは関係がない。項目数は品質をほとんど表していなくて、大事なのは一項目ごとに科学的な検証があるかどうかなんだよ。
ミライさん
予測の性能は、どうやって確かめるんですか?
ゲノ先生
ここは指標の役割を分けて覚えてほしい。オッズ比やハザード比は、主に「関連の強さ」を表すもの。AUCやC統計量は「識別能」、つまり発症する人としない人を順位づけできるか。キャリブレーションは「示した確率が実際の頻度と合っているか」。感度・特異度やPPV・NPVは、閾値を決めたときの分類の性能だね。だから「オッズ比が高い=よい予測モデル」ではないんだ。そして大事なのは、どの集団で検証された数字なのか、モデルを作ったデータと性能を測ったデータが分かれているかどうか。さらに言えば、その検証結果を外に出しているかどうかだよ。学会で発表したり、出典と一緒に公開したりしている事業者は、それだけで一歩先を行っている。
ミライさん
なるほど。でも、検査会社によって結果が違うことってありますか?
ゲノ先生
正直に言うとあり得る。使っている解析チップ、参照データベース、アルゴリズムが違えば、同じSNPデータからでもスコアが変わることがある。だから、どういうデータとアルゴリズムを使っているか公開している会社を選ぶのが大事だよ。
ミライさん
サービスの資料で「従来の遺伝子検査に比べて3倍」といった表現も見かけます。あれはどう読めばいいですか?
ゲノ先生
いい質問だね。こうした「◯倍」は、多くの場合、予測性能の指標の改善幅を比べた数字なんだ。たとえば、年齢や性別だけのモデルにPRSを足したときにAUCがどれだけ伸びたか。その伸び幅を、従来型の検査の伸び幅と比べて「3倍」と表現する、といった具合だね。
ミライさん
AUCの値そのものが3倍になるわけではないんですね。
ゲノ先生
そこがポイント。AUCは0.5から1.0の範囲の指標だから、値が3倍になることはそもそもない。だから資料でこうした数字を見たら、「何の指標を、どの疾患で、何と比べた数字ですか」と確認するといい。きちんと答えられる事業者なら、その数字は信頼できる材料になるよ。
ミライさん
なるほど!精度の話は「読み取り」と「予測」を分けて、しかも「何の指標の話か」まで確認するんですね。

まとめ

  • 1DNAを正しく読み取る精度(分析的妥当性)は検査法ごとに確認するもので、病気を予測する性能とは別
  • 2「PRSを使っているから高精度」ではなく、元GWAS・対象集団・検証結果とその公開状況まで確認する
  • 3「精度」という言葉が、どの指標を指しているのかを明示しているかが信頼性のカギ

よくある質問

遺伝子検査の精度はどのくらい正確ですか?
一つの数字では答えられません。DNAの型を正しく読み取る工程の精度(分析的妥当性)は、測定手法や対象とする変異、検体品質によって変わるため、検査法ごとに確認する必要があります。また、それは病気の予測性能とは別の指標です。予測性能は、識別能(AUC)、キャリブレーション、閾値を定めた場合の感度・特異度などで評価され、オッズ比やハザード比は主に関連の強さを表す指標です。
遺伝子検査の正確さは検査会社によって変わりますか?
解析チップの種類、元となるGWAS、スコアの構築方法が異なるため、結果に差が出る可能性はあります。使用しているデータと手法、検証結果を公開している会社を選ぶことが推奨されます。

参考情報

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